- 組曲「展覧会の絵」より全曲(M.ムソログスキー)
組曲「展覧会の絵」は、西欧文化を超克した純粋にロシア的な芸術の創造の意欲を燃やした建築家・美術かヴィクトル・ハイマンの死(1873年)を悼んで書き上げられた作品で、原曲はピアノ独奏曲であるが、「ボレロ」の作曲家モーリス・ラヴェルによる管弦楽編曲(1922−1923年)でいっそう広く親しまれている。元来この曲はピアノ的、というよりもオーケストラ的な効果に富んでいたが、管弦楽法の魔術師とも言われたラヴェルの霊感と洞察に満ちた名編曲によって、見事に管弦楽曲として生まれ変わったのである。
「展覧会の絵」という表題通り、この曲は親友のハルトマンが40歳の働き盛りで世を去った翌年、ペテルブルグ(旧レニングラード)の美術館で彼を記念する個展が開かれた時、そこを訪れたムソログスキーが亡き友の遺作から受けた印象を元に作曲したもので、ハルトマンの10の絵画やデザインが音楽によって再創造されている。またプロムナードという、ロシア民謡風の旋律とその変奏が曲の始めと、曲と曲の間に挿入され、ときには局の中にも取り入れられてる。これは、志半ばで他界した友への惜別の情とその業績に対する敬意を胸に秘めて、展覧会場を静かに歩き回るムソログスキー自身を描写し、併せて、全曲を統一する重要な鎹の役を果たしているのである。 |